最近、お米の値段にびっくりすることが増えました。
もちろんお米に限らず、さまざまな日用品や食材が値上がりしています。
限られた収入の中でやりくりしながら生活するのが、今の時代の当たり前になりつつあります。
この「値上げの波」は、医療業界にも確実に押し寄せています。
僕が所属している眼科業界も例外ではありません。
特に顕著なのが、海外から輸入される医療機器や消耗品の価格です。
アメリカをはじめとするメーカーが価格を上げれば、日本側もそれに応じるほかありません。
こうして、国際的な価格変動がそのまま日本の医療現場に影響を与える構図が見えてきます。
日本の医療制度と価格の仕組み
日本の医療業界は「保険診療」によって経済が回っています。
これは、検査や治療に対して国が定めた価格(診療報酬)に基づいて病院やクリニックが報酬を受け取る仕組みです。
この診療報酬は2年ごとに厚生労働省が見直しており、昨今は医療費の抑制傾向から、価格が引き下げられることも少なくありません。
病院やクリニックの収益は、診療報酬から人件費・光熱費・機器代・消耗品代などの「原材料費」を差し引いた残りの部分になります。
つまり、この「原材料費」こそが、僕たち営業職が扱う製品の価格になるわけです。
原材料費の高騰が与える圧力
では、その原材料費が値上がりすると、現場では何が起こるのか。
保険診療によって診療報酬(売上)は固定されている以上、仕入れコストが上がると、直接的に病院やクリニックの利益を圧迫します。
飲食店であれば原価が上がった分、価格に転嫁するという方法もありますが、医療はそうはいきません。
価格転嫁が認められていないため、経費が増えれば増えるほど、医療機関の経営は苦しくなります。
こうした状況が続けば、より安い消耗品への切り替えや検査の削減など、品質低下に繋がる可能性すらあります。
「効率化」ではなく「妥協」になってしまえば、それは医療の質を損なう結果になりかねません。
おわりに:現場の工夫だけでは限界がある
価格が上がる理由は、世界的な情勢やコスト構造を見れば理解できます。
しかし、その調整を現場の営業や医療機関にだけ委ねるのは、あまりにも負担が大きいと感じます。
医療の質を維持しながらコストを吸収するには、営業側も、病院側も、そして制度そのものも、もう一歩踏み込んだ議論が必要ではないでしょうか。