眼科で使用される静的視野計は、視界の中心に異常がないかを調べるための自覚検査です。
この検査結果には略語や数値が多く、視野検査に不慣れな医療従事者にとっては理解が難しい部分も多いのが現状です。
今回は、視野検査における測定アルゴリズム「SITA」について解説します。
SITAとは?
SITA(Swedish Interactive Thresholding Algorithm)は、視野検査の効率化を目的に開発されたアルゴリズムです。
現在よく使われている測定方式には、以下の4種類があります。
- 全点閾値(Full Threshold)
- SITA Standard
- SITA Fast
- SITA Faster
※機器メーカーにより呼称やアルゴリズムは異なる場合がありますが、基本概念は共通しています。
各測定方式の違いと特徴
測定方式 | 検査時間 | 精度 | 特徴 |
全点閾値 | 非常に長い | 高い | すべての検査点で詳細に感度を測定 |
SITA Standard | 標準 | 高い | 適度な精度と検査時間のバランス |
SITA Fast | やや短い | 中程度 | 検査点数を減らしつつ予測アルゴリズムを活用 |
SITA Faster | 非常に短い | やや低い | 前回の検査結果を活用し、工程を簡略化 |
SITA系は、検査の時間短縮と患者の集中力維持によって、より良い検査精度を目指しています。
ただし、検査工程を省略すればするほど、前提条件(過去データの精度や患者の協力)に影響を受けやすくなるため、万能ではありません。
この時間短縮のアルゴリズムは各社工夫を凝らしているところです。[静的視野計、どう選ぶ?|眼科開業医・買い替え検討者必見の比較記事]
実際の運用上の注意点
- 患者の状態に応じた使い分けが重要です。
たとえば、初回検査や診断目的の症例には SITA Standard を推奨。
一方、経過観察やスクリーニングでは SITA Faster のような時短アルゴリズムが有用になるケースもあります。 - 前回データの質が悪ければ、SITA Faster の信頼性も下がります。
寝不足・体調不良・集中力低下などの影響も考慮し、無条件に「早いから良い」とは限らない点に注意が必要です。
まとめ
視野検査の信頼性と効率は、選択するアルゴリズムによって大きく異なります。
SITAシリーズは検査時間の短縮を図るために進化してきた背景がありますが、短縮と引き換えに省略される工程や前回データ依存性が高くなる点には注意が必要です。
「最も早い=最も優れている」わけではなく、患者の状態や検査目的に応じて適切なプログラムを選択することが大切です。
器械の性能を理解し、臨床に合った運用を行うことが正確な診断につながります。