眼科で使用される静的視野計は、視野の中心に異常がないかを調べるための自覚検査です。
検査結果には略語や数値が多く使われており、視野検査に不慣れな医療従事者にとっては、内容を理解するのが難しいことも少なくありません。
この記事では、視野検査の代表的な解析指標である『MD』と『VFI』について、はじめての方にもわかりやすく解説します。
MDとは?
MD(Mean Deviation)は、
「視野全体の感度が、年齢相当の正常値と比べてどの程度ずれているか」を示す指標です。
- 単位は dB(デシベル)
- 数値が低い(マイナスが大きい)ほど、視野全体の感度が低下していることを意味します
- 感度の“平均的なズレ”を表すため、全体的な視野障害の有無や進行の程度を見るときに役立ちます
表記例:MD -12.18dB p<1%
この例は、視野感度が同年代の健常者より12.18dB低下しており、統計的に100人に1人未満の人にしか見られない状態。という意味になります。
PSDとは?(MDとセットでチェック)
PSD(Pattern Standard Deviation)は、
「正常な視野パターンからどの程度感度が崩れているか」を示す指標です。
- 単位は dB
- 数値が高いほど、視野の感度に局所的な異常(バラつき)があることを示します
- 初期の緑内障など、部分的な異常を検出するのに適しています
表記例:PSD 10.26dB p<0.5%
この例は、同年代の健常者と比べて、局所的に10.26dB分の視野感度の異常があり、それが統計的には200人に1人未満しか起こらないほどの有意な視野障害である可能性が高いという読み方になります。
MDが悪化するとPSDの数値が下がる傾向ですが、全体が悪くなることで”局所”が目立たなくなることでこういったパラドックスが発生します。
MDとPSDを組み合わせて見ると?
- MD → 視野全体の平均感度の低下具合を見る
- PSD → 局所的な感度の異常の有無を見る
この2つをセットで確認することで、
視野全体の状態と局所異常の両方を把握することができます。
VFIとは?
VFI(Visual Field Index)は、
「視野全体の視機能を0〜100%のスコアで示す指標」です。
- 視野のうち、中心部や重要な部位を重く評価してスコアを出します
- 単位は %(パーセント)。100%に近いほど視機能が保たれていると判断されます
- 進行評価(スロープ)に使われることが多いですが、経過観察の中でMDと併せて活用されます
表記例:VFI 70%
理想的な100%の視機能の内、70%が残っている。という解釈です。
まとめ:MD・PSD・VFIはこう使い分けよう
視野検査においては、以下のように使い分けることで視野の状態を多角的に理解できます:
- MD → 視野全体の平均感度を見る
- PSD → 局所的な異常がないかを見る
- VFI → 中心を重視した視機能のスコアで経過観察に有用
検査結果の読み解きに慣れないうちは、数値の意味を整理するだけでも理解が進みます。
少しずつ経験と照らし合わせながら、確かな読み方を身につけていきましょう。