眼科で使用される静的視野計は、視界の中心に異常がないかを調べるための自覚検査です。
この検査結果には略語や数値が多く、視野検査に不慣れな医療従事者にとっては理解が難しい部分も少なくありません。
今回は、視野検査結果の初めに登場する「グレースケール」「TD:トータル偏差」「PD:パターン偏差」について解説します。
はじめに
「グレースケール」といえば、視野検査結果に表示されるグレーの点々。
僕自身、以前は「黒いところが悪いんでしょ?」くらいの認識でしたし、「TD」や「PD」といった略語も、正直よく分かっていませんでした。
この記事では、「グレースケール」「TD」「PD」の意味とその違いを、できるだけわかりやすく整理してみます。
グレースケールとは?
グレースケールとは、感度の数値(dB)を濃淡で視覚的に表示した図です。
「実測閾値」「TD」「PD」それぞれに対応したグレースケールが存在します。
- 実測閾値:今回の検査で得られた生データ
- TD:同年代の健常者との比較結果
- PD:全体的な感度低下を補正し、局所異常を強調した結果
ハンフリー視野計の検査結果では、上部に表示されているのがこのグレースケールです。左が実測閾値、右がそのグレースケールです(画像準備中)。
TD(トータル偏差)とは?
TD(Total Deviation)は、同年代の健常者と比較して、どれだけ視野感度が落ちているかを数値化した指標です。
- 数値がマイナス → 感度が低下
- 数値がゼロに近い → 正常範囲
TDにもグレースケールがあり、感度低下の度合いを濃淡で視覚的に把握できます。ただし、全体的な視野低下(白内障など)も反映されてしまう点に注意が必要です。
ハンフリーでは左下に縦並びで表示され、上がTD、下がそのグレースケールです。
PD(パターン偏差)とは?
PD(Pattern Deviation)は、TDから全体的な感度の落ち込みを補正し、局所的な感度異常を抽出する指標です。
- 眼疾患による部分的な視野障害(初期の緑内障など)を見つけやすい
- 白内障のような全体的な低下を排除できる
ハンフリーでは右下に縦並びで表示され、上がPD、下がそのグレースケールです。
TDとPDの違い・関係性
- TD:健常者との比較による視野感度の全体的な低下
- PD:TDの中から全体的な低下を差し引き、局所異常を可視化
つまり、TDが全体を見せる地図なら、PDはその中の「異常地点」だけを浮かび上がらせたものです。
まとめ
視野検査における「グレースケール」「TD(トータル偏差)」「PD(パターン偏差)」は、それぞれ異なる視点から視野異常を可視化する重要な指標です。
グレースケールは感度の濃淡を直感的に把握するための表示であり、TDは同年代の健常者との比較、PDは局所的な異常の強調に使われます。
これらの違いを理解することで、視野検査の読影がより正確になります。